「これだからZ世代は使えない」

大手自動車会社で働く松下沙耶香さん(仮名・25歳)は、誰にも言えない苦しみを抱えていました。

直属の上司である横山課長(仮名)は、本社でも評判が高く「理想の上司」と言われる人物。しかし、二人きりになると態度が一変します。「君みたいな使えない人間、辞めてしまえ」「何をやってもダメだな」と人格を否定する言葉を投げつけてきます。

横山課長のもとでは次々と同僚が辞めていきます。そのたびに「これだからZ世代は使えない」と周囲に聞こえるように声を荒げます。その言葉を聞いた松下さんは「そうか、わたしたちの世代は考え方が甘いのかもしれない」と思い込んでしまっていました。

追い打ちをかけるように、横山課長はミスをすると背中を触ってくるようになりました。最初は「励まそうとしてくれている」と思った松下さんも、下着部分を意図的に触れられていることに気づき、恐怖に震えるようになりました。そしてある日、横山課長は会社でふたりきりのタイミングのとき「ここでズボンを下ろしたらどうする?」と聞いてきたそうです。

その夜、彼女は「モームリ」に連絡してきました。「これ以上は耐えられません。一刻も早く辞めたいです」。決定的な証拠はありません。横山課長から逆恨みされたり、事実無根だと訴えられるリスクをおそれ、松下さんは本当の退職理由は会社に伝えないでほしいといいました。

会社には「彼女は、ほかにやりたいことが見つかったので辞めたいようです」とお伝えしました。これまでにも複数の依頼を受けていた会社のため、「またか」と嘆かれるか、慣れた手つきで処理されるだろうと思っていました。ところが一瞬、言葉に詰まったあと、人事担当者から思いがけない申し出が返ってきました。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。

●本当の退職理由を言えなかった松下さん。会社の人事部はどのように対応するのでしょうか。後編【「退職代行なんか使いやがって」Z世代を見下していた“理想の上司”を追いつめた人事部の執念】で詳しく紹介します。