再就職後に掛けた保険料の扱いは?

しかし、その後60歳9カ月にフルタイムの仕事に就くことができ、厚生年金にも加入することになりました。早織さんは再就職が決まった当時、安定した収入が得られるようになって安堵しました。

「結果論としては繰上げする必要もなかったかも。まぁ、今更繰上げは取消しできないのは分かってるけど」と思いますが、同時に「そう言えば、繰上げの手続きをする際、厚生年金に入るとその掛けた保険料分の老齢厚生年金が退職した時とかに増えるって聞いたな。繰上げによって減額されちゃったけど、厚生年金に入ることで今後年金はまだまだ増やせるってことね」と思います。

ところが、再就職したにもかかわらず、その会社を11カ月で退職することになりました。61歳8カ月の時のことです。65歳までは頑張って勤務するつもりでしたが、「やっぱり、あの職場と仕事、私には無理」と感じていました。「また辞めることになっちゃった……」と思いながら、継続的な給与収入がなくなってしまうことになりました。

ここで、「けど、我慢して11カ月分の厚生年金の保険料払ったんだから、退職を機にちょっとは年金が増えそう」と思います。ほんの少しでも年金が増えれば多少は楽になるはずと考えます。

しかし、待てど暮らせど、年金額が増えることについてのお知らせは来ず、年金額も今までと変わりません。気になった早織さんは62歳になった時に年金事務所に聞くことにしました。

63歳まで待つように言われる

年金事務所で職員に「年金は繰上げしているんですけど、退職すると掛けた分の年金が増えると聞いていたのに、掛けた11カ月分が全然増えません。あれは私の聞き間違いだったのですか?」と尋ねます。

職員は「繰上げされているんですね」と言い、63歳時点での見込額を示しながら「年金が増えるのは63歳になるまで待ってください」と付け加えます。

63歳時点での額は今より多く試算されていますが、どうやら63歳まで待たないといけないようです。あと1年待たないといけない理由はどこにあるのでしょうか。

●なぜ63歳まで待たなければならないのか? その理由と63歳以降の年金再計算の仕組みについては、後編【「保険料が掛け捨てにならないのは安心」年金繰上げ受給後に厚生年金加入、63歳まで増額されない理由とは】で詳説します。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。