日本の労働市場は、依然として人手不足の状況が続いています。厚生労働省が発表した「一般職業紹介状況(令和7年3月分及び令和6年度分)」によると、令和7年3月の有効求人倍率は1.26倍となり、前月比で0.02ポイント上昇しました。この数字は、求職者1人に対して1.26人分の求人があることを示しており、企業の人材確保の難しさが浮き彫りになっています。

今回は、この統計データの背景にある企業や求職者の実態に迫ります。人手不足に悩む中小企業の取り組みや、転職市場で奮闘する求職者の声を通じて、日本の雇用情勢の現状と課題を探っていきます。

「採用に苦戦する毎日」中小企業の人事担当者が直面する厳しい現実

東京都内で製造業を営む中小企業A社の人事担当者、佐藤さん(仮名・45歳)は、人材確保の難しさを痛感しています。従業員数約120名の同社では、ここ数年で定年退職者が増加し、技術の継承が急務となっています。

「ここ数年、慢性的な人手不足に悩まされています。特に技術職の採用が難しく、募集をかけても応募が少ないのが現状です」と佐藤さんは語ります。昨年は技術職の募集に対して、わずか3名の応募しかなく、その中から適任者を見つけることができなかったといいます。

A社では、新卒採用と中途採用の両方で人材を確保しようとしていますが、思うような成果が得られていないといいます。昨年度の採用実績は、新卒2名、中途1名にとどまり、目標の7名には遠く及びませんでした。

「新卒採用では、大手企業との競争に勝てず、なかなか優秀な人材を確保できません。中途採用でも、経験者を募集していますが、希望する条件にマッチする人材を見つけるのが難しいですね」と佐藤さんは肩を落とします。