義母はさらにエスカレート
その後も義母の声は、次第にエスカレートしていった。
「どうせ家でも、適当なものしか食べさせてないんでしょう? いい? 子どもは母親の作ったご飯で大きくなるのよ? 子どもを放り出して働きに出てる人に、まともな食事なんて作れるの?」
静かなリビングに、責め立てるような言葉が容赦なく降り注ぐ。弘美はただ、黙って伸弥を抱き寄せた。反論すれば、また面倒なことになると分かっていたからだ。それでも、胸の奥でぐつぐつと煮え立つものを抑えきれず、体が小さく震えた。
「私はね、ずっと心配だったのよ。あんたのやり方じゃ……」
「母さん、いい加減にしろよ」
低く、怒気を孕んだ声が、部屋の空気を切り裂いた。
驚いて顔を上げると、そこには、スーツ姿のまま、険しい顔をした勇樹が立っていた。玄関が開く音に気づかないほど、弘美は追い詰められていたのだ。
「勇樹……? あんた、もう着いたの?」
義母が慌てたように声をかけたが、勇樹は微動だにしなかった。
「ずっと聞いてたよ。母さんが弘美に何を言ってたか」
「な、何をそんなに怒ってるのよ。私はね、あんたたちのためを思って……」
「違うだろ」
勇樹はきっぱりと遮った。その声音に、弘美まで背筋を伸ばしてしまうほどの、強い意志がこもっていた。
「母さんは自分のストレスを発散させてるだけだ。そんなことのために、弘美が傷つけられるなんてバカげてる」
義母は口を開きかけたが、言葉を呑み込んだ。