産休を取るための交換条件⁉
「産休をとっていいけど、産んでから最低でも1年間は必ず働くのが条件ね」
病院で正社員の看護師として働く岩船さん(仮名・33歳)は、上司にあたる40代女性の看護師長に産休取得を相談すると、そう告げられました。「産休は権利なのに、どうして許可がいるの……」と少し怪訝に思いながらも、岩船さんは「はい」と返事をします。
言われるまでもなく岩船さんは仕事を辞める気はありませんでした。職場では現場リーダーとして活躍しており、患者や同僚からの信頼も厚く、仕事にやりがいを感じていたからです。人手不足の職場で産休を取る後ろめたさもあり、産休・育休明けは今以上に仕事を頑張りたいとさえ思っていました。
ところが、無事に出産してからも、育児は予想外の連続です。子育てに適したマンションもなかなか見つからず、ようやく見つけたところは職場まで片道1時間半。そして早く仕事に復帰したくても、なかなか保育園に入れません。
それなのに病院からは「いつ戻ってくるのか?」と電話がたびたびかかってくるようになりました。岩船さんの復帰を見込んで、ギリギリの人員で回しているようです。責任感の強い岩船さんは連絡のたびにプレッシャーを感じ、新しい環境で育児と仕事の両立が可能かどうか考える暇もなく、保育園が決まり次第、すぐに職場に復帰しました。
しかし、復帰後の岩船さんを待ち受けていたのは信じられない理不尽の連続だったのです。
●周りから期待されて職場に戻った岩船さん。しかし、子育てと仕事の両立は、思いもよらない状況に追い込まれます。後編【「君のような人を世間では“子連れ様”って呼ぶの」産休後、続く嫌がらせに疲弊…30代女性が頼った最後の砦】で詳説します。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。