亜美さんは年間110万円ほど受け取れることに
義伸さんの厚生年金としての加入期間が15年(180カ月)程度でした。遺族厚生年金は亡くなった人の加入記録で計算された老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3で支給されます。
ただし、短期要件(先述の①②③)では、厚生年金加入月数が300月未満の場合は300月にみなして計算することになります。若くして死亡した場合に年金額が少なくなりすぎないようにするためです。その結果、180カ月程度の実期間で計算するよりも1.6倍以上多く計算され、年間50万円弱の遺族厚生年金となりました。
そして、義伸さんが亡くなった当時、亜美さんは40歳以上で、子どももいなかったため、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算61万2000円(2024年度の年額)が加算されます。
長期要件(先述の④)の場合は亡くなった人が240月以上厚生年金に加入していないと加算されませんが、短期要件の場合は180月程度の義伸さんのように240月未満でも加算されます。
寡婦加算込みで年間110万円となりましたが、寡婦加算があるのとないのとでは大きく年金額が異なることでしょう。
他に、義伸さんは国民年金第1号被保険者期間中(学生時代や個人事業主時代)に国民年金保険料を36月以上納めていたため、亜美さんには死亡一時金として12万円が支給されることになりました。
もしもの時に備えてくれた夫に感謝の想い
以上のような説明を年金事務所の窓口で受けた亜美さん。年金以外に貯蓄からの遺産もあり、義伸さんは自身がどうなったとしても亜美さんが生きていけるようにと抜かりなく備えてくれていました。亜美さんがもし義伸さんと結婚せず、独身を続けていたらこれらはなかったことでしょう。
こうして亜美さんは生前義伸さんが言っていた言葉の意味を知ることになりました。遺族年金は再婚すると受けられなくなります。しかし、亜美さんは「再婚はまずないかな」と思い、夫に感謝しながら新しい生活を始めました。また、自ら社会保険に入って働くことも検討し始めることにもなったのでした。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。