<前編のあらすじ>
会社員の卓斗さん(仮名、40歳)は、妻の瑞季さん(37歳)と3人の子ども、稜さん(10歳)、桃香さん(7歳)、耀太さん(5歳)と暮らしていました。年収800万円の卓斗さんに対し、瑞季さんは第3号被保険者として扶養に入っていましたが、1年前に急に体調を崩して入院し、そのまま帰らぬ人となってしまいました。
両親の支援を受けながら3人の子どもを一人で育てることになった卓斗さんは、将来への不安を抱えていました。そんな中、遺族年金について調べていると「自分は瑞季に生計維持されていないことになって遺族年金は出ないのかな」と疑問を感じ、年金事務所に相談に向かいます。すると、職員から「遺族基礎年金として年間139万円程度支給されますよ」と案内されました。
●前編:【父子家庭でも遺族基礎年金はもらえる? 37歳妻が3人の子を残し他界…年収800万円・40歳会社員の夫が気付いた年金制度の盲点】
年収800万円の夫でも遺族基礎年金の対象になる理由
卓斗さんに支給されることになる遺族基礎年金についてはいくつか支給要件があります。まず、亡くなった人の要件があり、亡くなった人が死亡当時、①国民年金の被保険者、②国民年金の被保険者であった国内に住所のある60歳以上65歳未満の人、③老齢基礎年金の受給資格期間25年以上を満たした人、いずれかであることが必要となります。瑞季さんは60歳未満ですので②には該当しませんし、また、20歳から国民年金に加入して亡くなる37歳当時まで17年しかありませんので、25年はなく③は満たせません。残る①についてですが、瑞季さんは国民年金第3号被保険者でした。そのため①を満たしています。第3号被保険者として卓斗さんの扶養に入っていましたが、国民年金の被保険者であることには変わりありません。瑞季さんは死亡当時までの直近1年間において継続して第3号被保険者であったことから、①と②の場合で必要な保険料納付要件についても満たしています。
そして、死亡当時、遺族が亡くなった人に生計を維持されていたことも要件となっていますが、これは、ア.死亡当時亡くなった人と遺族が生計同一であること(住民票上同一世帯であるなど)、イ.死亡当時遺族自身の前年の収入が850万円未満(所得の場合は655.5万円未満)であることなど、いずれも満たすことを指します。瑞季さんが亡くなった当時、卓斗さんと瑞季さんは生計が同一でしたし、卓斗さんも前年の年収が850万円未満でした。たとえ瑞季さんが卓斗さんの扶養に入っていたとしても、卓斗さん自身がアとイを満たしていれば、遺族基礎年金の対象遺族となります。
こうして、卓斗さんは遺族基礎年金を受給できるようになります。その額については、まず、基本額として83万1700円、さらに子どもが3人(稜さん、桃香さん、耀太さん)のため3人分の子の加算がされることになり、1人目、2人目までの加算は1人あたり23万9300円、3人目の加算については7万9800円となります(いずれも2025年度の場合の年額)。そのため、合計額は83万1700円+23万9300円×2+7万9800円の139万100円となります。