<前編のあらすじ>
義伸さんと亜美さんは42歳の夫婦です。2人は10年以上前に当時の職場で出会い、義伸さんの熱心なアプローチの末、結婚しました。
その後、義伸さんは個人事業主として働いていましたが、将来にしっかり備えようと考え、株式会社を設立し法人化しました。亜美さんも当時の会社は退職して、非正規雇用でマイペースに働いていました。
ところが会社設立から2年後。不幸なことに義伸さんは山登り中の事故で亡くなってしまいます。亜美さんは突然の出来事に動揺しつつ、年金事務所で遺族年金と死亡一時金を受け取れることを知りました。
●前編:【万が一のことがあっても生きていけるように…40代男性が最愛の妻のため準備していた「年金の対策」】
「法人化」がカギとなり妻に遺族厚生年金を遺せた
義伸さんが亡くなり、亜美さんに遺族年金が支給されることになりました。子どもがいないため、遺族年金のうち遺族基礎年金は対象にならず、遺族厚生年金の対象になります。
その遺族厚生年金が支給されるためには、亡くなった人がその死亡当時、次の①~④のいずれかに該当している必要があります。
①厚生年金被保険者であること
②厚生年金被保険者であった人で当該被保険者期間中に初診日のある傷病により初診日から5年以内に死亡していること
③障害厚生年金受給権者(障害等級1級・2級)であること
④老齢厚生年金の受給権者あるいは受給資格期間を満たした人(いずれも受給資格期間が原則25年以上あること)であること
①②③は短期要件、④は長期要件とされています。
義伸さんは法人化し、会社から役員報酬を受ける立場ということから、亡くなった当時厚生年金に加入中でした。そのため①を満たします。②③は該当せず、また、20歳以降国民年金や厚生年金に加入していたものの、亡くなった42歳当時25年の受給資格期間がなかったため、④は満たせません。もし、義伸さんが法人化していなかったら厚生年金に加入せず、①②③④いずれの要件を満たせず、結果、そもそも遺族厚生年金は支給されなかったことでしょう。