社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用拡大が行われ、短時間労働者でも社会保険の対象になりやすくなっています。「扶養を外れると社会保険料など負担が増える」と言われています。そのため扶養から外れないよう就労を調整する人も多く、これに対して政府は2023年10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」を実施するなど対策を講じているのが最近の動向です。しかし、扶養の範囲内での働き方を希望していたとしても年金の保険料が発生することもあります。
扶養の範囲内で働くことを希望する妻
玲子さん(仮名・55歳)はパートタイマーとして勤務している女性です。夫の孝徳さん(仮名)は65歳を目前に控えていますが、玲子さんは結婚以来、その孝徳さんの扶養に入っていました。そして、これまで玲子さん自身と孝徳さんの収入をもとに家計のやりくりをして、支出をいかに抑えるかに腐心していました。
そんな中、玲子さんは3~4年ほど前、頻繁にパート先から勤務時間の増加とそれに伴う社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入を打診されていました。しかし、「夫の扶養から外れると保険料がかかって手取りが減るのは嫌だなあ」「扶養に入っているほうが気楽に働けるし」と思い、これを固辞。それ以降、他のスタッフの採用やそれに伴って人手不足も解消されたため、やがて会社から社会保険加入の話はされなくなりました。
孝徳さんは60歳の定年後も再雇用されています。数年前、孝徳さんは「うちの会社、70歳まで勤務できることになったんだよ。給料は下がるけど、自分はまだまだ元気だし、65歳以降も頑張るよ」と玲子さんに伝えました。
孝徳さんが継続勤務に意気込んでいるため、玲子さんは「じゃあ私も引き続き扶養に入れそう」と今までどおり扶養の範囲内でパート勤務を続けようと考えました。