家の中も熱い

今年の猛暑は例年にも増して厳しく、家のなかだというのに常に蒸し暑い。特にキッチンで火を使っている時間などは、クーラーをつけていても汗が滝のように流れてくるほどだ。専業主婦としてずっと家にいる美律子は、普段よりもクーラーの温度を下げて過ごしていた。もちろん外の暑さは尋常ではなく、美津子は買い物に出掛けるたびに気が遠くなる思いがした。

そんなある日、美津子はいつものように自宅の外壁周りを見回っていた。大型台風の直撃への注意が連日ニュースで流れていたため、風で飛びそうな物がないかどうかチェックも兼ねてのことだった。

「やだ、なにこれ……」

顔を近づけてまじまじとよく見ると、どうやら外壁にコケが生えているようだった。

完璧な自宅を愛する美津子にとって、これは由々しき事態だ。

早速掃除道具を手に取った美津子は、炎天下の中、外壁周りを徹底的に掃除することにした。

ところが、コケがきれいに取れてホッとしたのもつかの間、美律子は家の壁に細かいひび割れが入っていることに気付いてしまった。

「え、うそでしょ……」

ぽつりとこぼした失望は、セミの声がかき消していった。

●自慢のマイホームは欠陥住宅だった⁉ 大型台風に耐えられるのか……?  後編「築4年なのに…」台風の被害で30万、住宅を早期劣化させる「酷暑の恐怖」とは】にて、詳細をお届けします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。