<前編のあらすじ>

美織(45歳)は、パワハラ上司にターゲットにされ、ストレスで不調をきたしたことをきっかけに、新卒からずっと勤めていた広告会社を退職した。

その後、転職活動を考えていたが、夫に「生活のために諦めてきたカフェ経営の夢」の後押しをされ、開業することを決意した。

夫や娘たちが手伝ってはくれるが、予算の制約と店の設備、メニューの試行錯誤など、美織は忙殺されていく。そして美織のカフェはオープンを迎えた。

●前編:「パワハラ上司のターゲットにされて…」ストレスで退職に追い込まれたワーママに起業を決意させた「充実感の正体」

客足は遠のき閑古鳥が鳴く

ようやく実現した長年の夢。美織は細部にまでこだわった内装や店のコンセプト、提供するメニューなど、時間をかけて準備したすべてに自信を持っていた。夫や娘にも協力してもらいながら、数え切れないほどの試行錯誤を繰り返して完成させた、美織にとって理想のカフェだった。

ところが、オープン記念で一時的に人が集まって以降、客足は遠のき、閑古鳥が鳴く日々が続いた。もちろん売り上げは予算を大きく下回った。美織は、毎日のように数字とにらめっこし、増えていくマイナスに胸を痛めていた。

コスト削減やメニュー名の見直し、サービスの質の向上、SNSを利用した宣伝など、さまざまな施策を試みたが、状況は好転しなかった。カフェの赤字が続く中、オーナーである美織は徐々に思いつめ始め、その緊張感は次第に店全体へと広がっていった。