5年以内は遡って支給される

慶太郎さんは「けど、もう60歳になりました。手術したのは56歳の時。人工肛門を入れて6カ月経った頃はちょうど57歳になったばかりの頃でした。今から障害年金の手続きはできるのですか?」と尋ねます。

これに対して職員は「人工肛門を入れた日から6カ月経過した日(=受給権発生日)から5年は経過していません。5年以内なら時効にかからず、57歳の障害認定日に遡って支給されます」と教えてくれました。

「5年過ぎていたらマズかったんだな……。今日相談に来て本当によかった」と、こうして慶太郎さんは、当初考えていた老齢年金の繰上げは取りやめ、障害年金の請求を進めることになりました。

65歳からの年金の受け取りはどうなる?

障害年金の手続きをした結果、慶太郎さんには障害等級3級の障害厚生年金として支給が決定されました。年間100万円超支給されることになり、これを過去に遡り、今後も受け取れることになりました。

ただし、65歳以降は障害厚生年金を受け取れなくなります。年金事務所では65歳以降の年金についても案内を受けていました。慶太郎さんは、繰上げをしない老齢年金(老齢基礎年金+老齢厚生年金)は65歳から受給できるようになりますが、65歳からは障害厚生年金と老齢年金、いずれか選択して受給することになり、両方は受け取れません(もし、65歳前で老齢年金を繰上げした場合も、障害厚生年金と繰上げした老齢年金、いずれか選択になります)。

慶太郎さんの場合、障害厚生年金より老齢年金のほうが基礎年金と厚生年金の2階建てで年金額も高く、65歳からの老齢年金の見込として合計200万円程度になりそうです。つまり、65歳からは老齢年金を選択することになり、障害厚生年金は事実上65歳までの支給となります。

障害厚生年金が57歳に遡って支給され、65歳までは受給し続けることができると分かった慶太郎さん。「これで65歳まではなんとかなるな」と思い、老齢年金を繰上げする必要がなくなりました。

なお、障害厚生年金を65歳まで受給している場合、65歳からの老齢年金については、受給開始を遅らせて増額させる繰下げ受給はできないことになります。これについて、慶太郎さんは「繰下げはする気がないから大丈夫」と了解しました。

慶太郎さんは障害者手帳と障害年金の障害等級の違いを知らず、障害年金を受け取れないと思い込んでいたため、危うく受け取りをしないまま過ごすところでした。病気やケガがあった際、障害年金の対象となるかどうか、気になる場合は一度年金事務所に相談に行きましょう。

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