<前編のあらすじ>

慶太郎さんは現在60歳で短時間勤務で働いています。4年前、妻や友人の勧めで人間ドックを受けたところ大腸がんが見つかり、手術で人工肛門を造設しました。

人工肛門造設により、慶太郎さんの生活は今までと一変します。仕事や日常生活に制約が生じ、障害者手帳を取得することになりました。障害者手帳の等級は4級です。

ある時、その話を聞いた友人から「手帳があるのなら障害年金も受けられるんじゃないか?」と助言を受けました。慶太郎さんは気になって障害年金について調べてみますが、インターネットで見た情報から「自分は対象外だ」と判断して受給を諦めてしまいました。

そうして60歳になった頃、慶太郎さんは治療費や収入減少が原因で生活の厳しさを感じ、老齢年金の繰上げを検討します。年金事務所に行って相談してみると、職員から返ってきたのは、「障害年金の対象になりえますので、老齢年金の繰上げ請求はせず、障害年金としての請求を早めにしていただいたほうがよろしいかと思います」というまさかの回答でした。

●前編:【人間ドックで大病発覚、治療で老後資金不足に…60歳男性が年金繰上げを考えて分かった「意外な事実」】

障害者手帳と障害年金の等級は異なることに注意!

慶太郎さんは「自分の障害等級は4級。3級にならないと障害年金は対象にならないんじゃないですか?」と職員に尋ねます。

確かに、慶太郎さんの障害者手帳には4級と書かれています。しかし、この障害者手帳の等級は“年金制度上の等級”とは異なります。

年金事務所の職員によると「人工肛門の場合、障害年金の制度上の等級では原則として3級となります」とのことでした。そして、障害年金のうち、1級~2級を対象とした障害基礎年金は対象にならなくても、1級~3級を対象とした障害厚生年金は受け取りの対象になりそうとの説明を受けました。

また、初診日(障害の原因となる病気やケガで初めて医師等の診察を受けた日)に会社に勤めて厚生年金に加入中で、長く厚生年金保険料も掛け続けていたため、そのほかの受給要件も満たしていそうでした。

その初診日から原則1年6カ月経過した日が障害認定日になり、障害認定日に障害等級に該当している場合は障害認定日に障害厚生年金の受給権が発生しますが、人工肛門を造設した場合は、初診日から1年6カ月経過していなくても、「人工肛門造設の日から6カ月経過した日」を「障害認定日=受給権発生日」とすることになっています。慶太郎さんはこれに該当していることにもなります。