お金がないわけでもないのに…

約束の場所に行くと、体型に合っていない洋服を着た子どもが2人いました。サイズが小さすぎて、とても窮屈そうだったのです。

成長が早い子どもの場合、あえて大きいサイズを買ってブカブカの状態で着ることもありますが、社長の子どもは正反対です。スカートやズボンの丈は短く、裾も寸足らずの状態。しばらく洋服を買えていないのは明らかでした。

山田さんはまず洋服を買う前に、食事に連れて行きました。2人ともお腹を空かせていて、腹ごしらえが必要だと思ったからです。

食事の最中も、山田さんは子どもの服装ばかり気になってしまいました。というのも、サイズだけではなく、季節感も合っていなかったから。冬なのに驚くほど薄着なのです。これでは大人でも我慢ができないのでは? と思うほどだったそう。「どうしてセーターや上着を着ないの?」と聞くと、「持っていない」と驚きの答えが返ってきます。

社長にお金がないわけではないですし、子どもたちにはお母さんもいるだろうにと思うと不思議でなりません。でも、とにかく冬服を着させてあげないと子どもたちがかわいそうです。すぐに子供服売り場に行って冬服を一式買い、着替えさせました。

子どもたちは暖かくて体型に合った洋服に大満足で、山田さんもそのような子どもたちを見てうれしく感じました。

子どもたちと出会った時の不思議な服装に関しては、その後家まで送った時に謎が解けました。社長は離婚をしていて、シングルファーザーだったのです。食事は家政婦さんが作ってくれましたが、子どもの洋服を買うことまでは対応していませんでした。

社長も子どもたちと買い物に行きたかったのでしょう。しかし、約束こそしていたものの、今回のようにたいてい仕事でキャンセルになっていたようです。そのため、いつになっても新しい洋服が買えない状態だったことが分かりました。

●衝撃的な出会いから、山田さんは社長の子どもたちが心配になります。しかし、多感な時期の子どもとの交流は難しいものです。 後編【「シングルファザーとの結婚」で突然母になった女性…衝突を乗り越え“本当の家族”になるまでの軌跡】で詳説します。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。