10年の経験が教えたコツ

沙織は、過去10年間にわたってさまざまな情報を吸収し、自分なりに理解しようと努めてきたため、経済成長率等の将来予想は当てにならないことをよく知っていた。特に、為替の見通しは難しい。結果的に、投資を始めて半年足らずの成績は良くないものだったが、マイナスになっているわけではなかった。他に、より良い成績のものがあったというだけのことだ。沙織は、現状を理解した上で、投資を継続することにした。「まずは、やってみて、結果を踏まえて修正する。その繰り返しが大事。そして、何より投資を継続することが重要なこと」と自分に言い聞かせた。それが、沙織が経験で身につけた投資で成功するコツだった。

息子が大学に進学するまでの資金が用意できたと思ったら、沙織は肩の荷を下ろしたように感じた。これまでは、子どものため、優人にはみじめな思いはさせたくないという一心で張り詰めたような気持ちで生活してきた。投信信託を保有してきたおかげで、優人の学費にメドがたった今、沙織は自分のために積立投資を始めるとともに、もう一度自分のために生きてみようと考え始めていた。「これからだって恋ができるかな?」と思わず口にした言葉に、沙織はクスリと笑みを漏らしていた。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。