<前編のあらすじ>
野村彩(33歳)は、大学在学中に妊娠し、卒業から間もなく結婚・出産したため、出産直後から子育てと生活に追われるように暮らしてきた。

成長が遅かった最初の子供が心配のあまり、子供中心の生活になり、2人目の子供を育て始めた頃には家計をぎりぎりに切り詰めるようになった。

その後、彩は子供たちを保育園に預けて働くようになるが、そんな生活の中でも、子供の将来のために積み立てをすることだけは実行していた。その結果が思わぬ人生の転機につながる。

●前編:「子育て罰」の“収入半減”に悩む33歳2児の母親。そのショックをやわらげた「あるもの」とは!?

母の残した「積み立て」で進学できた過去

彩が高校2年生の時に、母親が難病を患い入院した。その時に、学校をやめて働くという彩に対して、母親からは、「彩のために積立貯蓄をしているから学費のことは心配せずに、大学に行ってしっかり勉強しなさい」と諭された。病床で、母親から通帳を渡されて、大学に進学して保育士になる夢をかなえるという約束をさせられた。治療のかいなく母親は他界してしまったが、彩は「彩ちゃんの夢は、お母さんの夢なのよ」と励ましてくれた母親の言葉が忘れられなかった。

幸人が生まれた時、夫の由人と相談して毎月1万円を積み立てることにした。ちょうどその頃、由人の会社に確定拠出年金制度が導入されることになり、その説明会で由人が「積み立て投資」について感銘を受けたところだったので、1万円を定期預金で積み立てるのではなく、投資信託で積み立て投資することにした。ちょうど、その年(2014年)の1月に投資収益非課税のNISAが始まったところだったので、NISA口座で積立投資をすることにした。

投資対象に選んだのは「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース」だった。長期に積み立て投資をするつもりだと窓口で相談した時に、米国で実績の高い運用商品だからと説明された。

その後、成長が遅い幸人を心配して彩が幸人につき切りとなり、生活は困窮することになったが、「もし幸人が他の子供たちに比べて発育が心配な子供だったら、なおのことお金のことで苦労させたくはない」と思い、毎月の積み立てだけは頑張って続けた。

2歳違いで長女の茉莉が生まれた時には、夫の由人が昇進したこともあって給与が想定以上に増えたため、少しゆとりが生まれた。そのゆとり分で、茉莉の将来のために積み立て投資をすることにした。

茉莉のための積み立て投資を開始した時には、幸人の口座では、積立元本は26万円になっていたはずなのに、評価額は24.6万円と元本を下回っていたため、彩は不安に思った。ただ、由人が聞いた積み立て投資の成功事例では、積み立て当初は評価額がマイナスくらいの方が、将来は大きな収益に結び付くという話だったので、茉莉のための口座も同じファンドを使って毎月1万円の積み立てを始めた。