野村彩(33歳)は、念願だった保育園の保育士の職を得た。子供の頃から、将来の夢を問われると、「保育士さん」と答えるのが常だった。自分自身が幼いころに通っていた保育園で仲良くしてもらっていた「みさきセンセイ」が彩の理想の女性だった。

ただ、大学の在学中に妊娠してしまった彩は、保育士や幼稚園教諭の資格は得たものの、卒業後は出産と子育て、そして、日々の生活に追われるようになったため、保育士になるといった子供の頃の夢を忘れるような暮らしをしてきた。その夢に改めて向き合うきっかけを与えてくれたのは、子供が誕生すると同時に始めた投資信託の積立投資だった。

夢をあきらめ、育児に追われた20代

彩が夫の野村由人(34歳)と出会ったのは、大学時代に山歩きをするサークル活動をしていた時だった。大学は違ったものの同じ山歩きをするサークル同士で交流があり、在学中に何度か一緒に山を歩いている時に、自然と寄り添うようになった。

彩は、野村との間に結婚を意識するようなこともなかったのだが、意図せずに最初の子供を身ごもった時に、野村がその事実から逃げようとせず、結婚して一緒に家庭を作っていこうと言ってくれたことがうれしくて結婚を承諾した。その時には、彩は大学の最終学年であり、野村は一足早く就職していた。

結婚、出産、そして、第2子の妊娠と出産があったため、彩の20代前半は、あわただしく過ぎていった。新生児の子供の成長については、知識としては学校で学んでいたが、実際にその場に立ち会うと、授乳の後にげっぷをしてくれないとか、夜遅くまで起きていてなかなか寝てくれないとか、気になりだすと心配がどんどん膨らんだ。

実家から離れた東京で夫婦2人だけで子育てをしていると、小さなこと一つひとつについて相談する相手に困った。野村の母親は何かと気にかけてはくれたが、野村の実家は北海道だった。彩は高校生の時に母親を病気で亡くしていた。