一生懸命考えた結果の決断でも間違える
出遅れているといわれている日本株にしても2023年の株高で「TOPIX(東証株価指数)」が25.09%値上がり、「日経平均株価」が28.24%値上がりしたように、大型株は上昇していた。「TOPIX」の値上がり率は株価指数としては、米国の「S&P500」の24.23%を超えていた。このため、日本株に投資するのであれば、日本株の中小型株に投資しようと考え、日本の中小型株に投資する投信で新NISAの積立投資契約を申し込んだ。
ところが、実際に2024年が始まってみると、米国株の上昇は続き、為替市場では円安が一段と進展した。米国景気低迷と円高転換を見通して日本の中小型株に投資するファンドを選んだ沙織の選択は、見事に外れた。結果的に、2024年5月末までの成績は、年末当時に割高と考えられていた米国株に投資するファンドが良い成績になっていた。
このような見通しが外れることは決して珍しいことではない。実際に、IMF(国際通貨基金)が予想した米国の2024年のGDP成長率は2023年10月時点で1.5%成長だった。それが、2024年4月には2.7%成長へと修正された。わずか半年の間で成長率の見通しが、なんと1.5%からほぼ2倍の2.7%へと大きく変化した。そして、この米国の底堅い景気を背景として米国の利下げ開始期待は、2024年6月にも始まるという予想が、年内には利下げは実施されないかもしれないという見方も出てくるようになった。
世界の金融経済データを分析している専門家の見立てでも、見通しは数カ月という短い期間で修正される。米国の経済見通しといった世界経済全体を考える上でどだいになるような重要な指標には、慎重にも慎重を重ねて予想しているはずなのに、予想が大きく外れることがある。それ以外の見通しについては、もっとあいまいだと言って良い。専門家ですら半年や1年先のことはわからないのだ。