上田沙織(43歳)は、スマホから目をあげて深く息をついた。その動画を見るのは既に10回を超えていた。沙織は経験上、投資をするには、情報を得て、それを整理し、自分なりに納得した投資を実行することが大事だと思っていた。息子の優人(14歳)を女手一つで育ててきたものの、学費等の心配がいらない状態になったのは、投資信託を購入する決断をしたことのタマモノだった。沙織は、これから始める新NISAは、自分の将来の安心を確かなものにするためだと考えていた。それだけに、何に投資するのかということについて慎重に検討していた。ニュースサイトやSNSなど、さまざまな媒体から情報を求めて、今後の投資方針を決めようとしていた。

夫の事故死で生活が一変、いちるの望みは…

優人がまだ1歳になったばかりの時、沙織は夫の忠弘(享年32歳)を交通事故で亡くした。親兄弟は地方に暮らしていたため、忠弘の事故死を聞いた時には、文字通り沙織は目の前が真っ暗になって、その場に崩れ落ちてしまった。不幸中の幸いは、優人の妊娠を知った時に、思い切ってマンションを購入していたため、団体信用保険の適用を受けて住宅ローンの支払いが不要になったことだった。このため、当面の生活に困るということはなかったが、ようやく歩き始めたばかりの子供を抱えて、これからどうやって暮らしていこうかとぼうぜんとしてしまった。

そんな時、当時の同僚から「『財産3分法ファンド(不動産・債券・株式)毎月分配型』を使えば、投資金額の10%くらいの分配金が毎月出るから、まとまった資金を投資すれば生活がグンと楽になる」という話を聞いた。当時、沙織は冷静な判断ができなくなっていたのだろう。銀行で「財産3分法ファンド」の話を聞いて、質問したのは、「毎月20万円の分配金が受け取れるようにするには、いくら購入すればよいのですか?」ということだけだった。保険金等で3000万円を超える資金が手元に残っていたので、沙織は、その手元資金から2500万円で「財産3分法ファンド(不動産・債券・株式)毎月分配型」を購入した。 

その結果、毎月20万円を超える資金が分配金として定期的に手に入るようになった。それによって、優人を保育園に預けてパートタイマーとして働きに出て得られる収入と合わせれば生活に困るようなことはないだろうという見通しが立った。沙織にとって、投資信託は初めての経験だったが、毎月決まった金額を受け取るようになって、どういった仕組みで分配金が支払われるのか、詳しい仕組みを知りたくなった。