投資した後でも情報を集める

「財産3分法ファンド(不動産・債券・株式)毎月分配型」は、株式と不動産に25%ずつ、そして、債券に50%を投資して株式や不動産から得られる配当や値上がり益、そして、債券から得られる利息収入などを原資として、毎月の分配金を支払っている。沙織が購入した時の投資信託の基準価格は6150円程度で、分配金は1万口あたり毎月70円だった。毎月70円の分配金が継続するのであれば(年間840円)、単純計算で分配金利回りは年13.65%になった。沙織は、その利回りの高さにびっくりした。ファンドの仕組みや運用の内容について説明をしてくれた銀行の定期預金の金利は年0.06%だった。銀行に預けていてもお金が増えない時代だったのに、年13%もの利回りがあるというのが信じられなかった。

 

それから、沙織は、「投資信託」や「財産3分法ファンド」などをキーワードにして、さまざまな情報を集めるようになった。そうすると、やはり、分配金利回りが高過ぎるという批判めいた情報も少なくなかった。その批判は、「タコ足分配」の懸念にあった。実際に、1万円でスタートした基準価額が6000円台になっているというのは、元本を取り崩す「タコ足分配」を疑われてもしかたがないと思った。

その後、分配金は1万口当たり50円に引き下げられ、基準価額も5000円の大台を割るということも経験したが、沙織はあらかじめさまざまな懸念や予測についての情報を集めていた関係で、その変化に右往左往することはなかった。むしろ、株式や不動産(REIT)への投資、あるいは、外国債券への投資が、魅力的なリターンにつながることを学んでいた。そこへ「アベノミクス」による意図的な低金利・量的金融緩和政策が始まった(2012年12月~)。国内の株価が上昇し始めたため、分配金を受け取って使ってしまうのではなく、再投資して資産を増やすことを考えた方が良いと考えるようになった。

分配金を再投資すると決意した時、投資信託の基準価額は4800円程度になっていて、資産評価額は2000万円程度に減額していた。これまでに分配金として600万円ほどを受け取っていたため、収支としてはトントンといえた。そして、分配金を再投資するようになると、資産価値はグングンと増えていった。

もちろん、毎月の分配金を受け取らないで生活していくことは厳しいところがあった。ただ、それまでも分配金の一部は貯蓄していたし、優人も保育園の年中さんになり、仕事も落ち着いてきていたので日々の生活に困るというようなことにはならなかった。そして、結果的にこの決断が優人の学費などを心配しなくても済むような十分な資産につながっていった。

※タコが自分の足を食べるのに似て、元本を取り崩してまで過大な分配金を払い出す行為