課税口座からNISAに資金を移そうとすると…
ところが、何度か注文をするうちに、投資信託の購入や売却の価格が事前にわからないことに不満を感じるようになってきた。海外資産に投資する投資信託の場合、約定日が注文から3日目ということがある。このため、売却してから新しい投資信託に買い替えるために1週間程度の時間差が生じてしまう。智子の気持ちとしては、株式の売買のように、注文した瞬間に売買が成立してほしかった。特に、為替が1日で3円も4円も動くようなことを経験すると、海外資産に投資する場合は1日、2日の違いが為替変動の影響だけで、非常に大きな約定価格の違いになってしまっていた。それが、売却と購入のタイミングで経験させられるので、智子は何ともやりきれないいら立ちになっていた。「こういうことがいちいち気になってしまうのは、投資に向いていないのかな」と、いまだに約定されていない注文画面を見ながら智子はため息をついた。
智子は、「あいまいなこと」が嫌いだった。特に、仕事では「あいまいなこと」は、「ウソ」につながりやすく、信頼を損ねる元になると考えて徹底的に排除したし、その考え方は、日常生活にも及んでいた。その智子の感覚からすると、注文の時に正確な価格がわからない投資信託の売買は「あいまいなこと」の一つだった。「すし屋で時価で注文するようなもので、ちっとも落ち着いて食べてはいられない」と感じていた。仕事がうまく運んでいる時ですら、資産運用で「あいまいなこと」が気がかりで気分が晴れないというのは、「将来はお金がないと満足のいく生活はできない」と割り切って資産運用をしている智子としても納得できる状況ではなかった。「いっそのこと、投資信託をやめて株式一本にしてしまおうか」と智子は考え始めていた。そんな時……。
●投資の件でモヤモヤする智子に訪れた転機とは? 後編【婚活はもう卒業した…新NISAで老後の資産形成にラストスパートをかける女性の生活が一変した「突然の告白」】にて、詳細をお届けします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。