たぬきちとの新しい生活

それからたぬきちは元気になり、一郎の生活も一変した。

少しずつではあるが、職場でも周囲の同僚たちと交流をするようになった。

たぬきちがいることで、人生にまた彩りが戻ったのだ。

出社前の時間に、晴美との思い出の公園をたぬきちと散歩するのが日課になった。ゴミ袋を携帯して散歩がてら見つけたゴミを拾っていく。

前のように池の匂いはもう気にならないし、晴美との思い出が色あせることもない。黄金色をした晴美との日々の隣に、たぬきちとの新しい思い出が増えていった。

「ほら、たぬきち、あんまり急がないでくれ。私はもう年なんだから」

一郎はたぬきちに声をかけながら笑う。

残された人生、晴美に見守られながらたぬきちとできるだけ多くの思い出を作ろう。

そう思うだけで、一郎は未来がほんの少しだけ楽しみに思えた。

複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。