葬儀場の待合室から父の亡きがらが焼かれている火葬場を見る。

12月の寒い季節に、父が天国へと旅立った。美穂の53回目の誕生日、その翌日が父の命日になった。

美穂がまだ幼かった頃に母が亡くなり、父は男手一つで美穂を育てあげてきた。父は自身が興した会社にも心血を注ぎ、成功を収めている。

遠くから見ると、父は尊敬される人だったかもしれない。しかし仕事に命をかけた父の葬儀の参列者はとても少なかった。今、来ている参列者も単なるアリバイ作りで来ているだけだろう。こんなにも形式的で、渇いた葬儀も珍しい。

それも、仕事で財をなすと共に、他人を信用することができなくなった父は、多くの人間関係を断ったことが原因だった。

最終的に残された味方は美穂だけ。美穂は長い間、父の介護を献身的に行い、最期もみとることができたが、結局父は金を残しただけで、誰の記憶に残ることもなく旅立ってしまった。

葬儀が終わり、忌引休暇も消化し終えて美穂はまたいつものように仕事に復帰する。父がいなくなってからの生活は快適で、むなしかった。長らく父の介護をしていたからか、家があまりにも広く、暗く感じられた。

美穂の生活は仕事と家の往復。遊ぶような友達も恋人も、介護を理由に疎遠になっているうちに美穂の周りからはいなくなっていた。

ソファに座り、取りあえずテレビをつけて、ご飯を食べる。あとはそのままソファで本を読んだり携帯を眺めたりしているだけ。寝るまでの暇つぶしだ。

やがて睡魔がやってきて、美穂はテレビを消した。このまま仕事だけをこなす毎日を過ごして最期を迎える。そんな人生をぼんやりと思い描き、美穂ははっとする。

これでは父と同じ人生だ。

何かをしなければいけないと美穂は焦った。

結婚だなんだを夢見る年齢ではないかもしれない。しかし死ぬまでに、何か人生に彩りを添えたいと思った。