「借金返済のための投資」が危険な理由

中田さん夫婦は、その後、食費節約のためにランチをお弁当にしたり、外食や旅行の頻度を減らしたりするなど支出を削減させる計画を立てました。同時に、「投資信託の運用で収入を増やし、増えたお金を借金返済にあてたい」と言います。しかし、その考えは間違っています。

運用の王道は長期積立ですから、運用で利益が出たとしても、それは数年後の話です。今の生活は楽になりません。

仮に、5万円を投資して2カ月後に運よく20%の利益を獲得できたとすると1万円増えることになり、返済の足しにすることはできますが、その状態がずっと続くでしょうか? 損失が出ることも当然あります。中田さんの考えは、損失を考慮していない考えであり、非常に危険です。

家計が苦しいため、資産運用をしてお金を増やしたいと言う気持ちは分かります。しかし、資産運用をしたいなら、優先すべきはローンを返済して老後に借金を持ち込まないようにすること。少なくとも、今は資産運用にまわせるお金は全くありません。

そして、返済と同時に、これ以上ローンを増やさないために手元資金を増やす必要があります。中田さんの現在の貯蓄は約13万円。できれば、生活費の6カ月分は緊急資金として手元に備えておきたいところですが、「まずは100万円を目指しローンに頼らなくても緊急資金で耐えられる家計作りをしましょう」と提案しました。

赤字改善には夫婦の連携プレーが最も有効

赤字家計を改善するには、夫婦がその目的と方法を共有し協力することが重要です。この点、中田さん夫婦は素晴らしい連携プレーを見せてくれました。

長男に自宅通学をお願いする際は夫婦2人で説明を行いました。副業が許されている妻は、土日数時間のバイトを始めたそうですが、その間、家事は夫がフォローし、支出の見直しも1カ月ごとに夫婦で行ったそうです。

そのかいがあり、手元の緊急資金は半年で50万円たまりました。今後は残り50万円をためて、キャッシングに頼る生活を終わらせることを目指します。

また、ローンは計画通り返済していますが、「余裕が出たら繰り上げ返済して、返済のスピードを上げたいんです」と中田さんはうれしそうに語ってくれました。家計の改善を実感すると同時に、不安だった将来を変えられる楽しさも実感しているようです。

まだ完済まで数年かかると思いますが、ローンを完済し資産運用できる状態になったら、また相談にきますとのこと。楽しみに待っています。