弁護士からの言葉に胸騒ぎ
父も母も親戚がほとんど亡くなっていたこともあり、寂しい葬儀になってしまうのではないかと懸念していたら、父が生前親しくしていた友人やかつての教員仲間、教え子の方たちが駆けつけてくれました。父はいろいろな人から愛されていたのだなと改めて思いました。
父の友人で弁護士をしている柳沢さんから声をかけられたのは葬儀が終わり、みんなが引き上げた後のことです。会場にいたのは私と夫、2人の子供たちだけでした。
「この度は大変ご愁傷さまです」というお決まりのあいさつの後、「葬儀の直後にこんな話をするのは申し訳ないけれど、お父さんの公正証書遺言の正本を預かっているから、折を見て一緒に開封させてほしい」と伝えられました。
父が遺言を残していたと聞いて、なぜか心がざわつきました。そして、四十九日の法要を終えた後に柳沢さんの事務所で父の遺言を開封した時、その言いようのない不安が現実のものとなったのです。
遺言にはこう記されていました。
「遺言者が所有する別紙の自宅及び建物を、長女・宇津井奈保子(昭和五十二年十二月十二日生)に取得させる。
上記に記載のない財産については、全て丸山耕太(昭和五十五年八月十八日生)に取得させる。」
丸山耕太。知らない名前でしたが、それが誰かはすぐに分かりました。父と前妻との間に生まれた、父の実の息子です。
●不公平な相続に不満を持った奈保子さんがとった驚きの行動とは? 後編【「喜んでもらえて良かったね」不公平な相続に困惑も、娘が父を許せた理由】で詳説します。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。