宇津井奈保子さん(仮名)は昨夏、血のつながらない父親を亡くしました。奈保子さんの両親は奈保子さんが物心もつかないうちに離婚していて、奈保子さんは教師をしていた母親に引き取られました。その母親の再婚相手が同僚だった父親です。

再婚当時、奈保子さんは小学校5年生の生意気盛りで、母親を奪った父親に反発したこともありましたが、父親の穏やかで温かい人柄に触れるにつれ、心を開いていきました。

奈保子さん自身が結婚して子供が生まれた後も家族ぐるみの交流は続きましたが、やがて父親が介護施設に入居し、その翌年コロナの感染が拡大したことで近年はやや疎遠になっていました。

衝撃を受けたのは、父親が友人である弁護士に託していた遺言書の内容でした。父親の財産は全てひとり娘の自分が引き継ぐものと思っていましたが、遺言書に自宅以外の全財産を譲ると書かれていたのは、奈保子さんが聞いたこともない人の名前だったからです。

しかし、それが父親が前に結婚していた時に生まれた実子であることはすぐに分かりました。「お父さんは、本当は私のことをうとましく思っていたのかもしれない」。混乱した奈保子さんが取った驚きの行動とは? 1年前のショッキングな体験を、奈保子さん自身に振り返ってもらいました。

〈宇津井奈保子さんプロフィール〉

東京都在住
45歳
女性
専業主婦
外資系銀行勤務の夫、中学生と小学生の息子と4人暮らし
金融資産8000万円(世帯)

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郷里の長野の介護施設から父が亡くなったという知らせを受けたのは、関東地方の梅雨明けが報じられた7月の暑い日のことでした。8月生まれの父は77歳の喜寿を迎えることなく、亡き母の下へと旅立ったのです。