母の再婚相手だった父は、母が事故死した後も連れ子の私をわが子同然に扱ってくれました。父の支援のおかげで私は音楽大学を卒業して楽器販売店に就職し、現在の主人と出会うことができました。

その父が7月に76歳で亡くなり、帰郷して葬儀を行いました。生前に葬儀から埋葬に至るまで一切合切を取り決めておいたのは、いかにも堅実な父らしいと思いました。

法要の後、父の友人でも会った弁護士の柳沢さんから、「お父さんの遺言を預かっている」と伝えられました。柳沢さんの事務所で遺言を開封した時、そこには衝撃的な内容が記されていたのです。

母と3人で暮らした思い出の詰まった実家は私に、しかし、実家以外の全財産は丸山耕太という人に相続させるとあったのです。名前は知りませんでしたが、それが、父の最初の結婚の際に生まれた息子さんだということは分かりました。

●前編:娘が唖然…血のつながらない父が財産の大半を残した“驚きの相手”

弁護士に遺言の内容を問い詰めると……

ショックの余り、柳沢さんに「この内容、ご存じだったんですよね? どうして教えてくれなかったんですか?」と詰め寄ると、苦しげな顔で「奈保子ちゃんには絶対言わないでくれって言われていたんだ」と弁明されました。そして、私の目を見ることなく、こう続けたのです。

「法律上、お父さんの相続人は実子である耕太君だけだ。奈保子ちゃんは戸籍上娘だけれど養子縁組をしたわけじゃないから相続人になれないんだ。相続人なら遺留分と言って本来の相続分の2分の1を請求する権利があるけれど、奈保子ちゃんはそれができない。つまり、この遺言を受け入れてもらうしかないということだ」