遺されたのは築40年超えの実家のみ
郊外にある実家は築40年を超えていて、大した広さもありません。最寄り駅から遠いこともあって相続税評価額は1000万円に満たないということでした。これに対し、預貯金や債券、株式などを合計した父の金融資産は総額でゆうに6000万円を超えています。
私からすれば、最後の最後に強烈なしっぺ返しをくらった感じでした。実の娘のように思ってくれているというのは、私の一方的な思い込みに過ぎなかったのでしょう。本心では、私のことをうとましく感じていたのかもしれません。
我慢ならず、ついに興信所へ調査を依頼
それからしばらく、ふさぎ込む日が続きました。
主人に事情を話したら、「うちは経済的に不自由しているわけではないし、別に奈保子もお父さんの遺産が欲しいわけじゃないだろう? 逆に、息子さんの方に物入りな事情があったのかもしれないじゃないか」と指摘されました。
それにしても、長年家族として暮らしてきた私でなく、何十年も会っていなかったと思われる息子に多くの財産を渡すというのは納得できません。いくら、「血は水より濃い」にしても、あんまりです。
私は夫に内緒で興信所に依頼し、耕太さんが今何をしているのか調べました。耕太さんは同じ長野県内で代々続く造り酒屋の跡取り息子でした。
調査報告が届いた日の翌日が土曜日だったこともあり、私は夫に子供たちを任せ、友人と日帰り旅行に行くと言って家を出ました。