家族で迎える晴れの日

朝の光がやわらかく差し込む中、美代子は颯太の袴を整えていた。

ここ何日も、動画を何度も見返して予習した甲斐あって、手つきは想像以上にすんなり進んだ。

紺と白の和装に袖を通した颯太が、鏡の前でくるりと回る。

「かっこいい?」

「うん、すっごく似合ってる」

美代子がそう言うと、颯太は嬉しそうににやりと笑った。

隣では敦也が何度もネクタイを結び直している。慣れない行事に緊張しているのは、どうやら大人のほうだった。

神社に向かう道すがら、朝の空気は澄んでいて、踏みしめる砂利が小さく音を立てた。境内には色とりどりの着物姿の子どもたちがいて、あちこちから記念撮影のシャッター音が響いていた。

「わあ、あのお姉ちゃんの着物ピンク!」

颯太が指さして言うと、美代子は「きれいだね」と応えながら、歩幅を合わせて草履の足元を気にかける。受付では敦也が申し込みと支払いを引き受けてくれた。

その間、美代子は羽織の裾を整え、草履の紐が緩んでいないか確認する。

「足痛くなったら教えてね」

「うん」

祈祷の最中、颯太は少し緊張しながらも、静かに座っていた。祝詞が響くたび、ちらちらと顔を上げて美代子を見やる。幼いなりに今日が何か“特別”だと感じているのだろう。小さな手が、そっと美代子の指を握ってくる。美代子は短く目を伏せ、そのぬくもりを確かめるように握り返した。

撮影スタジオでは、ぎこちない笑顔を見せながらも、颯太はカメラの前に立ち続けた。ポーズを変えるたび、敦也が「いいぞ」と声をかける。

「できてる?」

「できてるできてる、じゃあそのままパパのほう見てごらん」