趣味のお茶やお花、着付けが役立つ日々

リゾートバイトを始めて1年以上になります。

長いこと専業主婦だった私に旅館の仕事ができるのか、最初は不安でいっぱいでしたが、今はすっかり慣れました。むしろ、趣味で習っていたお茶やお花、着付けなどが役に立ち、女将さんから「阿久津さんが来てくれて本当に助かるわ」などと褒められるとうれしくなります。

仲居仲間は私と同年配の地元の人たちに加え、リゾートバイトの若い女の子たちもいます。従業員寮は個室でホテルのシングルルームのようなシンプルな造りなので落ち着けはしませんが1人の時間は確保できますし、賄いが付き、外国人のお客様対応で英語のオンラインレッスンが無料で利用できるなど、福利厚生も充実しています。

スタート当初は3カ月ごとに職場を替えて日本縦断を目指そうかと考えていましたが、今の勤務先は環境も居心地もいいので6カ月まで契約を延長しました。

アラ還で専業主婦を辞めた理由

アラ還の私がリゾートバイト生活を始めたのには事情がありました。

7歳年上の会社員の夫とは結婚して30年になります。夫は定年後も再雇用で働き、昨年末に退職しました。我が家は持ち家ですが、住宅ローンは退職金で完済しています。65歳からは年金が出ますし、夫の勤務先には企業年金もありますから、贅沢をしなければ何とか暮らしていけるだろうと考えていました。

夫の兄から「義母を預かってくれないか」と持ちかけられたのは、昨夏のことでした。3年前に義父が亡くなった後、義母は暴言や奇行が目立つようになり、病院での検査を経てアルツハイマー型認知症と診断されていました。

義母はもともと猜疑心が強いタイプでしたが、それがますますひどくなり、自分のお金や持ち物を盗ったと誰彼構わず糾弾。義兄や義姉を口汚くののしったり、いきなり、掴みかかったりしたのだそうです。弄便の症状もあり、義姉が精神的にまいってしまっているとのことでした。

夫の実家は“限界集落”とまでは言いませんが地方の辺鄙な地域にあり、近隣には義母が入居できるような施設もありません。我が家なら近くに病院や施設も豊富で、義母も適切な治療が受けられるのではないかというのが義兄の言い分です。