旅行気分でホテルや旅館などでの短期バイトができるリゾートバイト。意外にもシニア層に人気で、ある求人サイトが実施したアンケートによると、50代以上の就業者数が2024年は2012年の約75倍にも達しています。とはいえ、中には「訳あり」の人も。

阿久津礼子さん(仮名)は専業主婦でしたが、1年数カ月前から夫と暮らす自宅を出て、バイト先を渡り歩いてきました。家出の原因は、夫が実家の義兄からアルツハイマー型認知症の義母を押し付けられたこと。前時代的な価値観の持ち主で我の強い姑とはもともと相性が良くなかったそうで、「お世話をするなんて考えられなかった」と言います。そんな阿久津さんの“反乱”を一人娘や実家の親御さんも応援してくれているとか。

そこで、阿久津さんにとっては「超久しぶりの社会復帰」になったというリゾートバイト生活と、阿久津さんが家を出るまでの詳しい経緯、今後どうしたいかなどを、阿久津さんご本人から話していただきました。

〈阿久津礼子さんプロフィール〉

静岡県滞在中
59歳
女性
アルバイト
1人暮らし
金融資産150万円(世帯)

朝7時から始まる旅館の仲居の1日

勤務先の旅館の朝の仕事は7時から始まります。身だしなみを整えてユニフォームの着物に着替え、簡単な朝食を取った後に仲居の朝礼に出て連絡事項と自分のシフトを確認。その後は厨房に出向いて、お客様の朝食をお部屋に運びます。

この旅館は客室にベッドがあるので、お布団上げの作業はありません。朝食もメニューが固定化しており品数も少ないので、夕食の配膳よりはずっと楽です。

朝食の片付けを終え、お客様がチェックアウトされた後は客室で忘れ物がないかひと通り調べた後、室内の清掃やベッドメイキング、部屋着やアメニティの補充などを行います。

賄いの昼食の後は“中抜き”と呼ばれる休憩時間が3時間ほどあります。

休憩明けはお客様のチェックインのお手伝いをし、夕礼で当日ご宿泊のお客様のプロフィールやご要望を確認し、その日の夕食のメニューと配膳の手順の説明を受けます。

夕食の配膳はお客様のお食事のペースに合わせて行うので、ご高齢のお客様だと3時間近くかかることもあります。担当は平均で3組様ほどです。全ての食器をお下げして、ご挨拶を済ませたら、この日の勤務は終了です。