<前編のあらすじ>
銀行勤めの30代独身女性・さつきは、母から「妹の由利と連絡が取れない」と電話を受け、様子を見に行くよう頼まれる。姉という立場を押し付けられることに不満を感じながらも、予定をキャンセルして由利のアパートへ向かうことにした。
由利の住所を訪ね、セキュリティもないボロアパートに驚くさつき。さらに郵便受けから飛び出した消費者金融の督促状を発見する。
部屋の中に招き入れられたさつきは、荒れ果てた室内を目の当たりにする。一体何があったのか、さつきは由利に問いただそうとする。
●【前編】「折り返しがないの」心配する母の頼みで嫌々妹のアパートへ…郵便受けから飛び出る“書類”に姉が絶句したワケ
妹が抱えていた借金
室内の丸テーブルには書類や調味料の類いが置かれている。部屋の隅には空のペットボトルが無造作に捨ててあった。ベッドの3分の2くらいは段ボール箱が積み上がり、天井につきそうになっている。こんなところでどうやって生活しているのかと疑問に思うほどゴミだらけの部屋だった。
さつきは我慢して薄汚れたカーペットの上に座る。由利は普段の定位置らしき場所に座り、ばつが悪そうに俯く。
「……何か飲む?」
「いいわ。それよりもこれはどういうことなの? 掃除ができてないとかはまだいいわ。それよりもあの督促状は何? 借金をしてるってこと?」
さつきの質問に由利はこくりと頷いた。
「何にそんなお金を使ってるのよ? ギャンブルとかをやってるの?」
「……違う。色々あって……」
「色々って……?」
由利は唇を動かして迷っていたようだが意を決して話し始めた。
「……実は会社をクビになってさ」
「は……⁉ クビ⁉ あんた、何したの?」
由利は首を横に振った。
「私は何もしてないよ。コロナで会社の業績が悪化しただけ」
「確かアパレルの会社で働いてたのよね……? あの時期は色々と大変だったのは分かるけど……。不当解雇とかじゃないよね?」
さつきが質問をすると、由利は追いつめられたような苦しそうな顔をしている。
