由利を追い詰めたビジネス

「あ、あのさ、ゴメン、クビ、じゃないんだ。働けなくなったけどクビじゃなくて、契約打ち切りってやつで……」

さつきは由利が何を言ってるのか分からなかった。しかし由利の表情を見てようやく理解ができた。

「派遣社員だったってこと? 正社員って嘘をついてたの?」

「……うん。アパレル関係っていうのも嘘じゃないんだけどアパレルの会社のコールセンターで働いていたってだけなんだよね」

「何その嘘……。どうしてそんな嘘をついたの?」

「……だって派遣社員とかかっこ悪いじゃん」

その言葉に、さつきは少し意外な感じがした。由利は物事に頓着せずに好き勝手に生きているように見えていたから。

「それで仕事がなくなったからお金がなくなって借金生活になったってこと?」

「……そうじゃない。騙されたんだよ」

由利は悔しそうにそう呟いた。さつきは次々と出てくる衝撃的な言葉に頭がクラクラしていた。

「……どういうことか話して」

「友達からせどりビジネスをしようって誘われたのよ。せどりって知ってる?」

さつきは頷いて、ベッドの上の段ボールを見た。

「美顔ローラーとか美容グッズを色々売ってて、最初はそれなりに良かったんだけどいきなりその子と連絡が取れなくなって……。私が仕入れて、その子がフリマアプリとか通販サイトで売るってやり方でやってて、けっこう無理に仕入れたりしてたんだけど、在庫と借金がかなり残っちゃって……」

「それで返済の請求を無視をしてるの? どれくらい?」

「……もう半年くらいかな」

さつきは思わず舌打ちをした。頭が痛くなってきた。

「あのね、もしこれ以上支払いをしなかったら差し押さえとかそういうことになるのよ⁉ そうなったら本当に生活だってまともにできなくなるんだからね! なんでそんな大事なことを誰にも言わなかったの⁉ お母さんに言ってお金を工面してもらえば良かったじゃない⁉」

しかし由利は激しく拒絶をする。

「嫌! 嫌よ! 絶対に嫌! 」

「……どうして?」