事故により経済的な不安

江美子さんの家では、お父さんも歯科医師でした。医師一家にとっては想定外の妊娠でしたが、「まずは育てることが先決だった」と江美子さんは振り返ります。許すも許さないもありませんでした。
    
江美子さんは都内の家に戻り、親に助けてもらいながら自分も歯科医師をして頑張ってきました。江美子さんの両親も裕福だったので、孫の学費や生活費などの経済的な援助もしてくれたそうです。娘さんは中高一貫の私立校に入り順風満帆に成長しました。

このまま何事もなく過ごせればよかったのですが、人生には山も谷もあり、そして“まさか”が訪れることもあるものです。

3年前に江美子さんは交通事故にあい、脊髄を傷つけてしまったのです。それまでは歯科医師としての収入があり、娘さんとの生活には全く困っていませんでした。でも交通事故にあってからは無理がきかない体になり、歯科医師として半日しか仕事ができなくなってしまったのです。そのため収入は激減しました。

両親に頼ることも考えましたが、すでに80歳を超えて仕事もしていません。むしろ自分たちの老後の心配もあるので、娘や孫を想う気持ちはあっても援助するのは難しくなっていました。

それに、江美子さんには親の介護という不安もありました。自分は無理ができない体ですから、もし親の介護が必要となってもできないのではないかと思ったのです。もちろんお金もかかりますから、江美子さんは不安な毎日を過ごしていました。

●将来への不安を募らせる江美子さん。娘を想い、ある決断をくだします。後編【「婚活よりも父親探し」17歳娘の将来を想い、50代シングルマザーが再び向き合い始めた“過去の恋”】にて詳しく紹介します。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。