育てた野菜を娘に…夫が語った定年後の夢

そんな折、夫が突然口にしたのは、「定年後に田舎で小さな農園をやってみたい」という夢でした。

家庭菜園が好きな夫らしい発想ですが、農園経営となると話は別です。資金も必要ですし、老後の生活のためには安定した再雇用を選ぶほうが現実的だと思いました。

「自分の体力は心配じゃないの?」

私がそう言うと、夫は少し考え込んでから笑いました。

「まあ無理はしないよ。でも何もせず老後を過ごすより、やりたいことに挑戦する方が俺らしいだろ? 趣味の延長みたいなものでさ。育てた野菜を娘に送ってやったら、きっと喜ぶだろうし」

確かに夫らしい考え方です。そして何より、娘を思う気持ちが伝わってきました。

●とはいえ、現実の問題を無視するわけにはいかず、夫と描く理想の老後との間で中村さんの心は揺れます。そこで踏み出した最初の一歩とは何だったのでしょうか。後編【「未来はそれほど暗くない」年金不安と独身娘の将来に悩む50代女性、夢を追うことで見つけた“1つの答え”】で詳しくお伝えします。