隠されていた「脱毛サロンのパンフ」と「クレカの契約書」

数日後、夏美が大学へ出かけたあと、洋子はいつものように家事をしていた。ふと、彼女の部屋のドアが少し開いているのに気づく。

「どうせ散らかってるだろうし、掃除しておこうか」そう誰に言うでもなくつぶやいて、掃除機を持って中へ入った。

机の上には教科書やプリントが山積み。ベッドの上には着替えかけの服が置きっぱなしだ。窓辺のカーテンを開け、風を通すと、机の引き出しの隙間から色鮮やかなクリアファイルの端がのぞいていた。

何気なく取り出すと、それは脱毛サロンのパンフレットだった。中には料金表やコース説明が入っている。表紙には「学割キャンペーン」の文字が大きく印刷されていた。

「まさか…」と思いながら、さらに引き出しを整理していると、封筒に入った書類が出てきた。それは見慣れないクレジットカードの契約書類だった。カード会社のロゴも、今まで家で使ってきたものとは違う。

手の中の紙が少し湿っていくのを感じた。

――なぜこんなものを。

頭の中で疑問がぐるぐると回る。バイトを増やした目的、夜帰りが遅い理由、会話を避けるような態度。すべてが1本の線でつながるような気がした。

パンフレットと契約書を見下ろしながら、洋子はしばらく動けなかった。怒りというより、不安と寂しさが胸に広がっていく。洋子が知らないところで、娘が大きな決断をしてしまった。その事実だけが、重くのしかかってきた。

しばらくしてから洋子は書類をそっとエプロンのポケットにしまい、掃除機のスイッチを入れた。
――これから、どうしよう。どうすればいいのか…。

考えがまとまらず、機械音の向こうで、心臓の鼓動だけがやけに大きく響いていた。

●引き出しの中から娘の秘密を見つけてしまった洋子。親に黙って勝手に契約をしてしまったのか、騙されてはいないのか。気が気でない洋子が取った行動とは…。後編【「お母さんは間違ってない、信じてたけど…。ずっと苦しかった」過干渉な母に伝えられずにいた「娘の本音」】にて詳細をお届けする。