<前編のまとめ>
有名アパレルブランドで働く伊藤杏奈さん(仮名・25歳)は、10時間立ちっぱなし、休憩なし、最低賃金以下という過酷な環境で働き続けていました。
心身をすり減らし、自社ブランドを目にするだけで吐き気を感じるほど追い詰められる日々。そんな彼女が最後に頼ったのが退職代行サービスでした。
ところが、退職手続きが無事に済んだ直後、弊社に執拗な攻撃が始まります。
●前編:【ブラック企業の退職代行】「自社ブランドを見るだけで吐き気」有名アパレル店の販売員女性を追い込む過酷な職場
40回超の嫌がらせ
「退職は認めない。オマエは正社員か? アルバイトのくせに電話をかけてくるな!」
伊藤さんの退職が決まってから、弊社に嫌がらせの電話がかかってくるようになりました。相談員に「オマエは何歳だ? 年下だろう」「いくら稼いでんるだ」「どうして退職代行なんて仕事をやろうとしたのか、一度、会ってじっくり聞きたいな」など、執拗に言いがかりをつけてきます。
退職代行を使われたことに腹を立てた人事部からの電話と思われるでしょうが、この電話の主は社長です。日本全国に店舗がある大手アパレル会社社長が直々に電話をかけてきているのです。
実は、この社長は1年前にも同様の行為をしています。そのときは、昼夜を問わず40回超も電話をかけてきました。社員が退職代行を使うまでに追い込まれていた状況を、社長自ら反省しているのかとも思いましたが、まったく違います。退職者の名前さえ知りません。ただ、退職代行を使われたのが気に喰わなかっただけです。警察にも相談しましたが、警察相手にも「民事不介入だろう」と怒鳴っていたようです。
退職代行を使われるのが嫌なら、法令を遵守し、従業員を大切にすればいいだけです。それをしないから、何度も従業員が退職代行に依頼するわけです。
これは極端な例かもしれませんが、退職代行から電話すると激昂されたり、舌打ちされたりすることはたまにあります。「退職ぐらい自分で言えよ」という心境なのでしょうが、外部の人間である私たちにさえ、このように接するのですから、もし本人が「辞めたい」と言えば、さらにキツイ言葉を投げつけられたのではないでしょうか。そんな職場だから、自ら辞めたいと言えないのです。一見すれば「退職代行を使われた!」と怒ってそうでも、実態は辞めたことへの怒りであり、退職代行への言葉は、そのまま依頼者が受けたであろう言葉です。
退職代行のサービスには、依頼者の心理的な負荷を相談員が代わりに受け止めることも含まれていると考えています。