治療プランの中身は

正直、禁煙と病院はあまり結びつかなかったが、会社の帰りに予約を入れた隆宏は騙されたと思うことにして禁煙外来へ足を運んだ。

いかにも健康そうで精悍な顔つきの医者は“治療プラン”について丁寧に説明したあと、呼気一酸化炭素濃度というものを測定し、隆宏の喫煙状況を確認した。

医者からの具体的な説明や励ましの言葉は、ただ気合いだけで禁煙をしていたときよりも遥かに明確に成功のビジョンを隆宏に持たせてくれた。

禁煙は意志の力などではなく、薬などを使った治療で治すものだという考えにも驚かされるばかりだったが、それ以上に驚いたのは保険が適用されることだ。12週間の治療期間の料金はおよそ2万円で、1日に1箱――つまり月におよそ2万円を煙草に使っていた隆宏からすれば経済的ですらあった。

ニコチンパッチなどを使いながら続けた禁煙生活を3ヶ月続けることができた6月。隆宏は緊張しながら家に帰った。

「おかえり」

リビングにいた千秋に、ただいまと返事をした隆宏は鞄から紙袋を取り出した。

「あのさ、ちょっとこれなんだけど……」

「何? これ?」

「今日、結婚記念日だから」

千秋は驚いて目を丸くした。

「へえ、覚えてたんだ……。開けてもいい?」

「ああ、もちろん」