毎月の赤字は10万円…老後破綻の危機は目前に

そこで、まずは支出の把握から行いました。家計簿をつけていたため、支出の把握はほぼできていましたが、毎月の赤字が約10万円ありました。このままでは老後が来る前に破綻します。一方、老後については、2人の年金は合計18万円程度と思われますが、少なくとも30万円ほしいと言います。開いた口がふさがらなくなりそうですが、ここはしっかり口を閉めて、具体的な対策を話し合いました。

まず、外食については「でも、たまには外食しないと、心が貧しくなる」、次にブランド品の購入については「見栄もあるけど、これを身に付けていると人生が楽しくなる」。今持っているブランド品を売ることについては「でも、前の夫が残してくれたお金で買ったものだから大切に取っておきたい」と、改善の意思が見られません。

また、筆者が支出を下げられないなら収入を上げるしかないことを伝えたところ、美智子さんは「でも、今までこの金額以上稼いだことがないから、私には無理です。体力的にもきついからそろそろ仕事を辞めたい」と言う始末です。正敏さんも「どうにかしないといけないですよね。このままだと、母の買い物依存と同じ状況に陥ってしまうかもしれないし」としか言えません。

ここで、老後破綻に陥りやすい家庭の特徴をお伝えすると「でも……」と理由をつけて行動に移そうとしない傾向があります。「でも……」は改善のチャンスを奪ってしまう、もったいない言葉ですが、本人たちは改善チャンスを逃していることに気付いていません。

しかし、このコラムを読んでいる読者の皆さんは、この夫婦の問題点や改善点が分かるのではないでしょうか。ブランド品の購入や高級レストランでの外食は、この夫婦の収入では贅沢であり、支出削減の最優先項目です。ところが、本人たちはそれが贅沢だという意識が薄いのです。