どうやってブランド物を買ったのか
彼女――怜奈は思ったよりも素直な口調だった。それでも、やはり派手な髪とピアスが気になって仕方がない。視線をそらすと、彼女の手元にはハイブランドのショップバッグが下げられている。大祐と同じ学生だとすれば、おいそれと買えるようなブランドではないことは、ファッションにそれほど詳しくない正美でも分かる。
金持ちの家の子? それとも水商売? まさか大祐に買わせたんじゃないだろうか?
正美は次々と浮かんでくる疑問を押し殺し、会話を続けた。
「そう……大祐ももう帰る?」
「あー、いや……怜奈を送ってから、な」
「……へえ、それじゃあ、2人とも気をつけて帰ってね」
それだけ告げると、正美は逃げるようにその場を離れた。心臓がばくばくと鳴っていた。
家に帰り着いたころには、手が冷え切っていた。キッチンカウンターに寄りかかりながら、ぼんやりと先ほどの光景を思い出す。
金髪に緑のインナーカラー。じゃらじゃら光るピアス。馴れ馴れしく大祐に寄り添う姿。
どうにも好意を持てない。
しばらく悶々としていると、大祐が帰ってきた。
「ただいま」
「……おかえり」
正美はなるべく平静を装おうとした。だが、胸の中に溜め込んだ言葉たちが、うずうずと出口を求めて暴れ出していた。
「ちょっと大祐、説明してくれる?」
「何を?」
「さっきの子のことよ。どういうお友達なの?」
帰宅するなりソファに寝転がってスマホをいじる大祐に声をかけると、彼は面倒くさそうに顔を上げて答えた。
「友達じゃないよ、彼女だよ」