好物のアイスを全く食べず……
そんなことがあってから3日後、美希はスーパーで買った冷凍食品を入れようと冷凍庫を開く。
そこには箱アイスが封も切らず入っている。アイスを食べるのは友樹だけで、このアイスを買ってきたのは4日ほど前だったと美希は記憶していた。美希は冷凍食品を冷凍庫に押し込んで、リビングでテレビを見ている友樹に声をかける。
「ねえ、全然アイス食べてないよ? なんで?」
「ん~、だって寒いじゃん」
「いやまだ冬でもないし、友樹は一年中アイス食べてたじゃん」
友樹はだるそうに伸びをする。
「別にいいじゃん。そんなときもあるって」
「でもさ、冷凍庫にものが入りづらいから、早く食べきってほしいんだけど」
「……なら、美希が食べれば?」
「私がアイスそんなに好きじゃないの知ってるでしょ。買ってきたのは友樹なんだから自分で処理してよ」
「えー、分かったよ。じゃあ捨てておいていいよ」
「え……?」
友樹の返事に美希は目を丸くする。
昔、賞味期限が切れたコンビニスイーツを美希が捨てたことがあった。そのとき友樹は珍しく怒り、賞味期限と消費期限の違いを美希に何度も説明していた。
それ以降、美希はなるべく友樹の買ったお菓子には触れないようにしている。なのにその友樹がアイスを捨てるなんて言い出したのだから、驚かないはずがない。
「ねえ、もしかして知覚過敏とか?」
「は? 何だよそれ。違うよ」
「だっておかしいよ。急に暖かいお茶が飲みたいとか言うし。冷たい物がダメになったんでしょ?」
友樹は鼻で笑う。
「違うって」
「1回、歯医者行ってみたら?」
「い、いやいや、いいから。俺、仕事が忙しいから」
友樹は慌てふためきそのままテレビを消して逃げるように自室に戻ってしまった。そんな友樹の不穏な態度に、美希はある仮説が浮かんだ。