<前編のあらすじ>
8年前、父親を亡くした佐藤巧さんと弟の亮さん(ともに仮名)は、9000万円の遺産に対する相続税対策として、「配偶者の税額軽減制度」を利用し、母親に全財産を相続させました。
母親は実家を売却するつもりだったので、佐藤さんきょうだいは「二次相続までには何とかなるだろう」と楽観的に考えていました。しかし、次第に母親の気持ちは変化していき、実家への愛着を語り始めます。さらに、思いがけず伯父の家(母親の実家)も母親が相続したことで、新たな重荷が加わりました。
そして昨年秋、2軒の不動産を残して母親が急死してしまいます。
●前編:【2人あわせて相続税1000万円以上!? 母の急逝で狂った相続計画…50代兄弟が想定外の事態に見舞われた「驚きの経緯」】
「二次相続は何とかなる」という甘い見通し
8年前に父が亡くなった時、残された家族は、母が父の全財産を相続すると決めました。父の遺産の相続税評価額は9000万円近くに上り、相続税の基礎控除(我が家の場合は4800万円)を除く4200万円が課税対象です。しかし、評価額の大半は実家の不動産で、手元の金融資産では相続税を一括納付するのが難しかったため、母が引き継ぐことで「配偶者の税額の軽減(故人の配偶者が相続した遺産が1億6000万円、もしくは法定相続分のいずれか多い方の金額までは、相続税がかからない)」の制度を活用し、相続税の納付を逃れたのです。
配偶者の税額の軽減は、夫婦のどちらか一方が先に亡くなった一次相続の時はいいのですが、残された方が亡くなった二次相続での相続税負担が大きくなりがちです。でも、当時はデフレで地価もそれほど上がっておらず、専業主婦の母には資産もなかったので、二次相続も何とかなると高をくくっていました。
ところがその後、私と弟にとっては大きな誤算が2つ生じました。