母親の急逝で要らない不動産が2軒も残る事態に
1つは、母が「すぐに処分する」と話していた実家にそのまま住み続けたこと。そしてもう1つが、母の兄に当たる伯父が亡くなり、たった1人の相続人だった母が、空き家となっていた母の実家を相続したことです。今思えば相続放棄という手段もあったのではないかと思いますが、当時は伯父が入院した病院のケースワーカーから連絡をもらった後、諸般の手続きに追われ、じっくり考える余裕がなかったのです。
昭和の時代まで大農家だった母の実家は中途半端に広く、相談に出向いた自治体の窓口では「すぐに利活用するのは難しいかもしれませんね」と言われてしまいました。空き家バンクに登録はしたものの案の定声はかからず、一方で固定資産税や火災保険料、庭木の手入れ代などのコストは待ったなしにかかってきますから少々閉口気味でした。
そしてそんな矢先の昨秋、元気そのものだった母が急死したのです。
不謹慎かもしれませんが、母にしてみれば悪くない最期だったと思います。父は持病の糖尿病を悪化させ透析が欠かせなくなった上、多臓器不全でチューブにつながれて息を引き取りました。その姿を見ていた母は、「私は絶対にあんなふうになりたくない」と何度も繰り返していたからです。
その点、母は亡くなった当日にも友人と買い物やお茶を楽しんでいたようですし、脳疾患で、かかりつけ医も「苦痛もほんの一瞬だったのでは」と話していました。
とはいえ、既に首都圏に自宅マンションを購入している私と弟からすれば、要らない不動産を2つも残された格好です。近年の不動産バブルで、特に都内の実家の方はかなり値上がりしています。にもかかわらず、父の相続の時と同様、いや、それ以上に現預金はありません。