思わぬ相続で増えた“お荷物不動産”
厄介なのはもう1つの方で、3年前、母の兄にあたる伯父が亡くなり、伯父が住んでいた母の実家を母が相続したのです。伯父には家族がいましたが、ひとり娘が未婚のまま事故死し、伯母にも先立たれていたようです。
母はもともと母方の祖父母と不仲で、私たちきょうだいも母の実家を訪れた記憶は数えるほどしかありません。当然、伯父とも疎遠で、まさか母が伯父の相続人になるとは、つゆほども考えていませんでした。
伯父の場合も父と同様、遺産は母の実家の不動産が中心で、年金生活のため貯蓄はほとんどなかったようです。幸い相続税はかかりませんでしたが、空き家になった母の実家を引き継いだことで一気に面倒ごとが増えました。母は自分の実家には全く思い入れがなく、「あなたたち、お願いね」という感じだったからです。
よく言われることですが、人の住まなくなった家はすぐに劣化します。とはいえ、今は放置された空き家は「管理不全空き家」や「特定空き家」に認定されて自治体が介入できるようになっていますから所有者は大変です。
相続登記をした後に自治体の窓口に相談に出向きましたが、母の実家は農家で中途半端に広いこともあり、「すぐに利活用するのは難しいかもしれませんね」と言われました。空き家バンクに登録して売却先や賃貸先を募ったりもしましたが、案の定、2年近くたった今も何の反応もありません。一方で、固定資産税や火災保険料、庭木の手入れ代などのランニングコストは確実にかかってきます。
地縁があれば多少は違うのでしょうが、特に私たちきょうだいにとっては知らない土地に等しく、完全にお手上げ状態でした。
そうこうしているうちに、あんなに元気だった母が急死したのです。昨年の秋、80歳の誕生日を迎える1週間前のことでした。
●2軒の不動産を残して亡くなってしまった母親。兄弟が税理士事務所を訪ねると相続税に対する衝撃の事実を告げられてしまい……。 後編【“お荷物不動産”に生じた1000万円以上の相続税…「その場しのぎ」の相続対策が招いた老後資金崩壊の危機】で詳説します。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。