「気が変わっちゃったのよ」母の予想外の決断
なのに、この8年間で大きな誤算が2つありました。
1つは、母が実家の処分を渋ったことです。父が亡くなった直後には「ひとりで暮らしていくには広すぎるし、お父さんのことを思い出すからつらい」と話していたので、母にその気があるなら、いつでも売却の手伝いをすると伝えました。
その後コロナ禍になり、なかなか処分に着手できなかったのですが、母はコロナが明けた後も一向に動く気配がありません。短気な弟がしびれを切らして「お母さん、家を売るんじゃなかったの?」と尋ねたら、母はあっけらかんと「売ろうと思ってたけど、気が変わっちゃったのよ」と答えたのだそうです。
「年を取ってから新しい場所に住むとなると慣れるまで大変でしょ。荷物が多いから引っ越しも面倒だし。それに、近くならお友達もいるし、行きつけの病院もあるから安心じゃない」
そんなふうに言われてしまうと、私たち子供が無理強いするわけにもいきません。
周りにいろいろ助けてくれる人たちがいて、買い物や家事も自分でやっているようなので、母の方から「ひとり暮らしは無理!」と言ってくるまではひとまず様子を見ようと弟と話をしました。