思わぬ預金の発見が招いた人生最大のミス
「こんなに借金があるなら、相続放棄するしかないね」
続けて美代子さんが言葉を紡ぐ。
相続放棄とは、被相続人(故人)の財産を相続しないことを申し立てる制度である。これによってマイナスの財産(借金・未払い金など)すべてを放棄することができる。その一方で、プラスの財産(預貯金・不動産など)も相続できなくなる諸刃の剣でもある。
それを承知で、良子さんと美代子さんは相続放棄の手続きを進めることにした。しかし、良子さんはその直後に“やってはいけないこと”をしてしまった。
その週の日曜日、良子さんが遺品を整理しているとあまり使われていた形跡のない銀行通帳を見つけた。
どうせまともにお金は入ってないだろう。昔作ったまま放置されていた口座だろうと考えた。しかし、その考えは通帳を開いた瞬間に一変する。
「え? こんなに残ってるのか……」
思わず声が漏れる。
口座にはまだ50万円ほどの預金があったのだ。
「葬儀やこれからの整理にもお金がかかるし、このくらいの額なら……」
良子さんは軽い気持ちでATMに向かい、通帳とともに保管してあったカードを利用して現金を引き出した。だが、これこそが人生最大のミスだった。なんと相続放棄ができなくなってしまったのだ。
●軽い気持ちでお金を引き出してしまったことで思わぬ展開に……。その後、姉妹がたどった結末については、後編【「お金を引き出しちゃった」親を亡くした姉妹が多額の借金を背負うはめに…専門家が警告する相続で“絶対にやってはいけない”こと】で詳説します。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。