夫の態度は一変したが

里砂子が朝起きると、リビングは春の朝の冷たい空気が流れ込んできた。

「あ、おはよう」

ベランダから室内に目を向けた健一が洗濯ものを干す手を止めて、里砂子に声をかけた。

喘息発作で倒れた日から数日、健一はあのとき病院で言った言葉通り行動で示そうと頑張っている。正直、いつまで続くのやらと思わなくもないが、これまでほとんど里砂子1人で担っていた家事の負担が減ったことは好ましいことでもある。

「ねえ、まだ花粉飛んでるんだよ? 外に干さないでって言ったじゃん」

「え、ごめん。でも部屋干しじゃ臭うし、どうしたら……」

「は? この前、乾燥機の使い方教えたばっかでしょ」

「あ、そうだった。ごめん。すぐやる」

家事の負担は減った、はずだ。たぶん。

干しかけた洗濯ものを取り込んでリビングに戻ってきた健一は洗濯かごを抱えながら洗面所へ向かう。その途中、大きなくしゃみをして鼻をすする。

「風邪かな。最近、くしゃみが止まんなくてさ」

「花粉症じゃない? アレルギー検査してみれば?」

「いや、別にちょっと鼻がムズムズするだけだから」

「最初は私もそうだったよ。まあでもこれで少しは私の辛さが分かるかもね」

里砂子が笑うと、健一は顔を引きつらせた。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。