降りしきるフラワーシャワーのなかを歩く2人の姿を、黒留袖を身にまとうかすみは眺めている。

絶対に幸せになってほしいと静かに祈る。

あの晴れやかな笑顔が末永く続いていくことを切に願う。結婚はゴールではなく、始まりに過ぎないからこそ。かすみ自身の結婚が幸せだったとは言いがたかったからこそ。

隣には夫の達之が立っている。正礼装のモーニングコートを着ているあたりがすでにチグハグで、居心地が悪い。それなのにかすみと同じように涙ぐみ、時折ハンカチで目元を拭ったりしているのも、余計に居心地が悪かった。

にらんでいることに気づかれたのか、達之がかすみを見る。かすみは素早く視線を逸らす。鼻をすする音がして、かすみは心底不愉快に思う。

やがてフラワーシャワーのトンネルを抜けた新郎新婦がかすみたち両家の親のもとへとやってくる。

「唯菜、本当にきれいね。おめでとう」

「お母さんだって和服、すごく似合ってるよ。今まで本当にありがとう」

純白のウエディングドレス姿の唯菜は本当にきれいで、輝いて見えた。かすみは唯菜と腕を組みながら立っている新郎の凛々しい姿に向き直り、静かに頭を下げた。

「慎吾さん、唯菜のこと、末永くよろしくお願いします」

「はい、2人で協力して、幸せな家庭を築けるよう頑張ります」

新郎の表情からは結婚の幸福感に浮かれるわけではなく、真っ直ぐに芯の通った力強さが見て取れる。

だが、娘たちの姿が晴れやかであればあるほどに、嬉しい反面、どうして自分はこんな風になってしまったのかという影が濃くなっていく。黒留袖の漆黒よりもはるかに暗く、濁っていく。