<前編のあらすじ>

36歳で2児の母の相澤美奈は、ずっと専業主婦だったが、子育てが一段落したので就職することにした。

その分時間が作れなくなるので、PTAを辞めようと思い、会長の吉田加奈子(48)に言いに行った。ただ、吉田加奈子は「勝手にPTAを退会しないで」と怒り出してしまった。

やむを得ず、嫌々ながらPTA活動を続けていた美奈だったが、やはり納得ができず、ママ友の村井千鶴に相談した。すると、村井千鶴は驚くべき打ち明け話をはじめた……。

●前編:【「勝手にPTAを辞めないで!」と激怒…PTAを牛耳る「お局ママ」の嫌がらせに直面した「36歳2児のママ」の苦難】

 

「PTA会費の計算が合わないらしくて……」

村井千鶴は、誰かに盗み聞きされていないか、慎重にあたりを見まわして確認していた。やがて、安全を確信したのか、相澤美奈の耳元に顔を近づけて、小声でささやいた。

「実はさ、PTA会費の計算が合わないらしくて……」

「どういうこと?」

「もしかしたら、吉田さんが懐に入れているのかも……」

「ええっ? ウソでしょ?」

あまりに驚いたので、相澤美奈は大きな声をあげてしまった。

「しっ」村井千鶴がたしなめる。

「まあ、合わないっていっても、大きな金額じゃなかったんだけどね。小林さんが気になって、もう一度計算してみたら、やっぱり金額があわなかったらしいの。ほら、PTAでベルマークを集めてるじゃない? あれって1点=1円でお金が戻ってくるんだけど、そのお金の分がちょうど無くなっていたみたい」

「どういうこと?」

「ベルマークの払い戻し金って、銀行に振り込まれるんだけど、その払い戻し先の口座が、なぜか吉田さん名義の口座になってたんだって」

「そんな。それって……」

「まあ、本当なら問題だよね。吉田さんがPTA会長になってから10年ほど積み立ててたらしいから、数万円くらいになってたみたいだし」

村井千鶴は肩をすくめた。

「お金をネコババしてきたことを、隠したいからかも……」

ふと、相澤美奈の脳裏に悪い予感がよぎった。

「えと、なんだろう、つまり、吉田さんがPTAの活動にこだわっているのって……」

相澤美奈も、さすがにまさかとは思った。PTA会長の吉田加奈子は、上下関係にうるさくて美奈の苦手なタイプではあったが、そんなに悪いことをしているとは思っていなかった。ただ、これだけ証拠がそろっていると、吉田加奈子を疑わずにすますのは難しかった。

相澤美奈はようやく決心して口を開いた。

「吉田さんがずっとPTA会長をやっているのって、そうやってお金をネコババしてきたことを、隠したいからかも……」

それを聞いていた村井千鶴も、神妙な顔でうなずいた。

「うん。人が減ってしまって、じゃあ地域のPTAは解散しようってなったら、お金のこともバレちゃうしね」

「だから辞めてほしくなかったってことか……」

相澤美奈は、PTAを辞めたいと言いに行った時に、吉田加奈子に怒られたことを思い出した。

吉田加奈子のあの剣幕は、単に自分の悪事を隠すためのものだったのか……。そう思うと、相澤美奈の心に、怒りがこみ上げてきた。

「ねえ、この話を黙っておくのは良くないと思うんだけど」

相澤美奈が言うと、村井千鶴も同意した。

「そうだよね。私もそう思ってた」