元外資系コンサルに依頼した零細企業
的場義久は70歳。大学卒業後、自動車部品メーカーで勤務したのち40代で独立。車のヘッドライトを売る会社を立ち上げ、長年オーナー社長を務めてきた。会社は堅実に成長し、社員数は40人に達している。
ただ、的場義久は、自身が65歳になった時点で会長に退き、片腕だった高原かおり(60)に社長の椅子を譲っている。
的場の会社では、目下、長年の課題だったインターネット販売の強化に取り組んでいた。
ただ、的場の会社にはITに詳しい人材がいなかったので、外部のコンサルタントに依頼し、会社HPのリニューアルやECサイト構築を始めようとしていた。
ただ、そのコンサルとの最初の打ち合わせで事件が起こったのだった……。
「何だね、相談したいこととは」
その日、的場義久のいる会長室を訪れたのは、社長の高原かおりと、専務の米倉毅志だった。
二人とも困り果てた顔をしている。
――よほど重大な話のようだな……。
そう思い身構えた的場に、高原かおりが話をはじめた。
「実は……。松沢さんのことで、少しご相談したいことがありまして……」
「松沢、あのITコンサルの松沢さんのこと?」
的場が確認すると、高原かおりはうなずいた。
「はい。いま、HPのリニューアルの件で松沢さんと打ち合わせをしていたんです」
高原かおりが一度言葉を切り、下を向いてうつむく。
「どうした、言ってくれなきゃ分からないよ」
的場が催促すると、高原かおりはようやく決心がついたのか、顔をあげて次のように言った。
「私、あの人には我慢できません」
